

Photo by 田村正義 Masayoshi Tamura

JELABA COAT
JELABAジェラバは今ではモロッコを代表するような民族衣装の一つでフードの付いた全身を覆うほどおおきなコートである。現在使われているジェラバは前身頃、後身頃、袖、フードというパーツで出来ており、貫頭衣のフード付き版というのが分かりやすいかと思う。
砂漠地帯であれば、中容赦なく降り注ぐ日光、紫外線から肌を守る役割。また夜は気温が急激に下がるので毛布としての役割も果たしていたであろう。
しかしモロッコは比較的安定した気候の地域。意外と日本の九州程度と同じ緯度なのである。ではなぜこのような服装が定着したのか。いろいろと調べてみたが明確な答えの記述を見つけることはできなかった。
モロッコという場所はサハラ貿易の拠点である。砂漠を超えてヨーロッパ、北アフリカと西アフリカ地域を結ぶキャラバンの主要地域である。以前西アフリカ地域を調べたときのババンリガや、サウジアラビ、ベドウィンを調べたときに出てきたからだ全体を覆う長い生地で出来たローブなどは、距離はあれど共通する機能性を持ち貿易とイスラムと共に広がっていった服で、これもそれらの流れの一部なのではないのかと。砂漠の青の民といわれるトゥアレグの人たちを参考にしてみても、分厚いターバンを日よけに頭に巻き、かなり大きめの布を使った服装を見受けられる。おそらくターバンと大きな服が街着として、簡略化され着用されやすいものに進化した結果ではないのだろうか。そんな想像を掻き立てられるようなジェラバ。
今回は身幅も大きくとりゆったりとしつつも袖は細めにすることで引き締めだらしなく無く身幅の広さを活用できる形に仕上げた。着脱可能なフードは首後ろでボタン留めを設けたので着用時に形が崩れるのを気にしなくてもよい。使い勝手の良い面白いシルエットの服になったのではないかと思う。
QANDRISSI PANTS
QANDRISSI カンドリッシはモロッコにおけるパンツで、ウェストにギャザーをたっぷりと取り、股下も深め、オスマンのシャルワールやインドのサルワールなどと同じ派生のものと考えられる。乗馬、もしくはここではラクダになるのだろうか。動物の背に乗る際に股が擦れないよう、ギャザーでたゆんだ生地が肌を守ってくれる。股下が長いので通気性も確保されるのが特徴だ。
今回はウェストから太腿にかけてのボリュームを出すために前に片側だけで4つのタックを設けた。敢えて股下は通常のパンツと同等程度にしてアジア人の体のバランスを崩さないようにボリュームの重心を上目に取ることで着用時のバランスを整え、共生地のベルトを用意することで着用者の好みの寸法に調整できるのが特徴である
