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服の歴史と構成を織りなす要素として民族衣装を研究材料にし、
そこから得られる機能性や美を服に落とし込み多方面から表現しています。

EASTERN EUROPE

Photo by 田村正義 MasayoshiTamura
Image processing by eofm
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Szűr COAT

Szűr(シュール)とは東欧の山岳地帯にいる羊飼いを生業にしていた人たちのコートで、現在ではお祭りなどのハレの日に着るものになっていま。おそらくはsubaと呼ばれる毛皮で出来た、くるぶし丈ほどのとても重量のある大きなケープから派生したものでは無いかと想像しています。szűrはフェルトで出来ており、地域、家庭によって異なる意匠の刺繍が惜しみなく施されている世界でも稀にみる華麗なコートです。形状の特徴としては、前端を折り返し、その続きについている背中の腰ほどまである大きな襟が目を引きます。背中面にある襟の左右先端には8-9㎝程度の円盤状のトグルがついており、それを絡めて頭にかぶることでフードになり、雨風をしのぐことができます。しかしほぼつかわれることは無いようです。この特徴はsubaにもみられ、黒い子羊の毛皮で出来た襟のようなものがついており、おそらく後ろ脚部分だった毛皮を結ぶことで同様にフード状の構造にすることができたのではないかと思われます。往々にして形状だけ引き継がれてその本来の機能性は損なわれ、装飾としてのみその形が残るという事が民族衣装においては多々見られるので、これもおそらくそういった流れのものでは無いかと思う。袖は真横についており袖山は無い。そもそも袖はあるが通さない地域が多いようで、場所によっては袖口を丸い「ふた」で閉めてあり、袖をとおせないようなっている。こちらも先の変化と同様「装飾としての袖」に変容していった、装飾としての残ったという良い例ではなかろうか。(他にもオスマンのスルタンが来ていたカフタンは袖を通さない所か、左右の袖口がつながって背中で輪状になっているものもある)

今回はSzűrの特徴を反映させたダブルのコートを今回は製作してみました背中についたセーラーカラーのような特大の襟の延長は実際にボタンを留めることでフード状にすることができるので突然の雨や雪の時は役に立つだろう。また装飾としての役割も大きく、実際のAHの位置はショルダーポイントから敢えてとし、袖山もかなり低く設定している。その際に襟の端がちょうどショルダーポイントに来る程度に設定しているためオフショルダーの着心地をもちつつ、見た目は​綺麗に見えるという効果をもっています。

SIDE ZIP FUR VEST

東欧各諸国にある毛皮のベストなかでもハンガリー、ルーマニア等の毛皮ベストで前合わせのものではなく、脇と肩で留める仕様のベストがあり、それを参考にしたベスト。Szűr​同様全面に細密な刺繍が施してある。本来毛皮は内側を向いており保温性に優れた作りになっている。ジャケットと同じ身頃は4パーツから成るが、背中は肩甲骨の下の脇から腰まで内側にカーブを描いた逆三角形になるような形状の背中パーツと大きめの脇パーツでできており、体に立体的に沿うような仕立てになっている。脇と肩で留めるという構造はファスナーを起用してそのままに。毛皮は外に向け装飾性と防寒性に生かしたのが今回のベストだ。

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HOUSYA-SHIRTS.jpg

RADIAL PIN-TUCKED SHIRTS

放射ピンタックシャツは、名前の通り放射状にピンタックの入ったしゃつですが、ベースになっているのは東欧全体でみられるシャツ、チュニックの形状を咀嚼した形状になっています。そのシャツはプルオーバーシャツで前開きは胸上あたりまであり、肩、袖口に可動域や保温性を高めるための細かいギャザーが用いられ、女性用は特にコート同様、華麗な手刺繍が施されている。刺繍は装飾としての意味合いと補強としての意味合いも持ちます。男性用は女性用に比べギャザー分量が比較的少なく、装飾性というよりは必要な可動域を必要な分だけ入れ込んだという印象だ。素材はリネンで糸は太くしなやか。現在の日本においては麻は夏の素材としてイメージがついているが、寒さに弱い綿よりどこでも丈夫に育つ麻が重宝されてき他地域の方が多い。また麻の種類によっては長繊維でしなやかさを兼ね備えている。その中でも今回調査で手に入れたシャツは非常にしなやかでした。

 シャツは袖山は低く身頃はゆったりと、装飾としてのギャザーはピンタックにそぎ落とし、リネンとレーヨン混の生地でそのしなやかさを演出しました

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