服の歴史と構成を織りなす要素として民族衣装を研究材料にし、
そこから得られる機能性や美を服に落とし込み多方面から表現しています。

CENTRAL ASIA

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Photo by 田村正義 Masayoshi Tamura

CHAPAN COAT

Chapan/Shapan(チャパン/シャパン)とは中央アジア周辺の地域で着られるコートを指す。主に綿素材でできており、地域によっては内側に生地を入れてキルティングしてるものもある。丈や襟の形など地域性を持ってさまざまに発展したコートである。
 綿の表地に裏に羊毛やラクダの毛で裏地をつけたものをkupi(クピ)、毛皮だけで作ったものをton(トン)と呼ぶ。形状は似ているものの、地域ごとの寒さで使う素材が変わることによって名称が変わる。裕福な家庭においては表地をベルべットや刺繍などできれいに作られたものもある。丈は、chapanはひざ丈の物からくるぶし丈まで幅広く、ton、kupiはひざ下からくるぶし丈のものが多い。形状としてはカフタンと共通する部分が多い。
 機能性としては外套になるので、防寒の要素が多いと思われる。ウズベキスタンなど南方の国のchapanは一枚仕立ての物もあるが、北方では裏地とフェルトの中綿入りでキルティング加工しているものが多いようだ。
 今回のコートはこれらのchapan、kupi、tonの機能性をあわせもつ形のコートとして製作した。とくに防寒性に関して、総裏地はもちろんの事。上半身部分にのみ裏地の下にさらにウールの生地を挟み込んである。ウェストはベルトで調整するものとして裾広がりの形をしており暖かい空気を温めるべき上半身に閉じ込める。また2重裏地にする事で、空気の層を作りやすく暖かい空気をとどめやすくしている。
 襟はがこれは昔の写真にはあまり見られない特徴だ。強いて言えば裕福な家のkupiには襟が見られる。現代のカザフスタンのchapanは異常に大きな襟がついており研究資料として見た実物のchapanにも小さいながら襟はついていた。折り返して着るものとしてあるようだが、立てることでそれは実用性のあるものへと変わる。比較的前あきが大きいといえるchapanは、前あきから温まった空気が漏れてしまうのが唯一の難点である。それをカバーするべく今回のコートには
大きめの襟を作った。これを寒い時は立てて着ることで保温性を増すことが出来る。また襟にはステッチを入れることで襟の固さを出し、襟を立てて着る時にしなってしまわないようにしている。
 サイズは全体的に大きく、中にセーターを来ても窮屈に感じない。腕も余裕があるので曲げ伸ばしに不自由はない。その反面袖口が大きくなってしまうので、袖口にのみファー素材を用いて袖口からの空気の出入りを出来るだけ少なくしようと考えた。もし着ていて暑くなったときは襟を倒してウェストベルトを緩めるだけで空気の流れが生まれ換気されることだろう。
 ウェストベルトの位置は通常のウェストより気持ち下に着けることで上半身の容量を大きくし保温につなげる。また絞った時のシルエットも日本人の体系をきれいに見せられる位置として決定した。

 研究題材としたchapanは表地裏地と中綿の入ったキルティング加工を施したものであったがこれは現代の服と比較すると非常に重く感じたが、実際に着用してみて実に暖かかった。しかし現在においては服の軽量化が進み、また日本においての必要な保温性を考えるにそこまでの重さはかえって生活に不自由だと感じた。そこで比較的密度がありつつも厚さがあり、重さもさほどではないメルトン生地を採用。また秋、春用にコットンツィルも採用した形となった。

KOYLEK DRESS​

Koylek(コイレック≒シャツの意)とは女性用の服の呼称で、ワンピースのような形をしているものの総称である。Koylekは地域によってその特徴は違いはあるものの、総じてくるぶし丈ほどの長さをしており生地を贅沢に使ったゆったりしたドレスであり、民族によって細部が違う部分があるが、地域環境によるものではないかと推測している。
 比較的多く見られたのが袖口がラッパのように広がっているもの。また袖が異様に長く、手が隠れるような袖のものの2種類である。そもそもカザフスタンは夏と冬で気温差が大きく、緯度は最南端でも札幌位でそれより北に1500㎞以上続く国。冬季は極寒の地域であるため体を出来るだけ多く覆う、くるぶし丈のドレスであり、そして手を覆うほど長い袖ではないかと思われる。これと同じ袖はモンゴルの「デール」にも見られる。モンゴルを調べていた時は馬に乗る時、寒さから手を守るためというのが理由だった。また袖口がラッパのようになっているものに関しては私の推測だが夏用なのではと考えている。夏は北部でも30℃を超える日がある為、袖口が広く通気性のある形になったのではと考えた。
 おそらく前から来る風を避けるため「後あき」にして、スタンドカラーの襟がついている。現代の周辺の民族衣装に見られる形ではある。しかし一概に後あきだけとは限らず前あきのものもある。ドレスの形としては東欧からの影響があるのではないかと想像する。東へ行けば前合わせの服が多くみられる中、こちらは「かぶり」で、見比べてみると共通する部分が多いように見える
。 koylekは古い写真では上衣の下に隠れて、観察できるものが少なく、あったとしても写真が粗く裁断や切り替えについては細かく見ることができなかったため、ウズベキスタンのko’k ko’ylek(コクコイレック:青いシャツの意)を参考にした。こちらは前あきではあるがその様子は見えやすいものが多い。東欧のドレスと比較するとウェストに切り返しがあるかどうかが違うようである。中にはウェストの切り替えでギャザーを寄せているものもある。しかし共通としてはボリュームを持たせウェストで絞るという形態だ。そこで今回はko’k ko’ylekのパターンを主にしてスカート部分にボュームを出させえるため極端なAラインにしウェスト紐で調整できるようにした。また袖はボリュームを持たせるためギャザーを寄せたいわゆるビショップスリーブにした。これにより肌との設置面積は少なく、また上衣をさらに着たときは、空気の層を作り暖かくなるようにした。シンプルでありながら遊べる1着になっているのではないかと思う。

[編みを着る]

 

 糸や紐、竹や藁などを使って「編む」。

 起源は不明だが、最古のものとしては旧石器時代のにまでさかのぼる。日本においても縄文時代には編むという行為によって作られた網やかごなどが発見されている。前回の「紐」同様、数万年の間、人の生活の中で様々な形で使われてきた「編む」という行為。意匠としてというよりはそのもの自体の編み地による柄や模様は、もはや私たちは生まれた時からずっと目にしてきた「柄」である。それを柄としてジャガードで生地にしたてた。色はなじみのいい色合いでかつ日常的に着るにも柄の主張が激しくなりすぎないよう近似色でまとめた。